薬事法と農薬に関係はある?法律に抵触しないためのポイントを解説

農薬は、農作物や環境に有益な効果をもたらす一方で、人体や生態系に有害な影響を及ぼす可能性もあります。

そのため、農薬の製造、販売、使用には、法律による厳しい規制があります。しかし、農薬に関する法律は、複数の法律が関係しており、その内容や適用範囲は一般的に知られていません。

とくに、薬事法と農薬の関係は、よく分からないという方も多いのではないでしょうか。今回は薬事法と農薬の関係などについてご紹介します。

薬事法対策と商品の宣伝の方法について考えよう

農薬は薬事法の対象ではない

薬事法は、医薬品や医療機器の品質、有効性、安全性を確保するための法律です。農薬は薬事法の適用外であるものの、別の法律である農薬取締法によって規制されています。農薬取締法の違反は刑事罰の対象となり得るため、農薬の取り扱いには細心の注意が必要です。

この法律は農薬の品質、有効性、安全性を規定しています。農薬の製造、販売、使用に関する規制と責務を定めており、農林水産省が管轄です。ただし、農薬の中には、毒物や劇物に指定されているものがあります。毒物や劇物は、薬事法の一部に該当する毒物及び劇物取締法で規制されています。

法律に抵触しないためのポイント1.登録された農薬のみを農耕地で使用する

登録された農薬とは、農林水産省によって品質、有効性、安全性が審査され、承認された農薬を指します。登録された農薬は、農作物や樹木、花などの育成や管理に利用することができます。容器や包装には、「農林水産省が認可した第○○○○○号」といった記載がされているのが特徴です。

登録されていない農薬とは、農薬取締法に基づいて認可を受けていない除草剤を指します。農作物などの育成や管理目的以外で使われます。例えば道路、駐車場、グラウンドなどです。登録されていない農薬は、容器や包装、店舗内の目につきやすい場所などに、「農薬としての使用は禁止」という表示が掲示されています。

農薬として登録されていない除草剤を農作物などの栽培・管理に使用することは、法律で禁止されています。農薬取締法に違反すると、3年以下の懲役または100万円以下の罰金、あるいはその両方が科せられる可能性があるため、違反しないよう注意が必要です。

また、農薬として登録されていない除草剤を使用すると、農作物に残留農薬が検出されるリスクが高まり、食品衛生法に基づく検査で不合格となる可能性があります。さらに、農薬として登録されていない除草剤を使用すると、農作物や周囲の環境に悪影響を及ぼす恐れがあります。

法律に抵触しないためのポイント2.登録された農薬を使用する際は基準を守る

農薬の使用ガイドラインは、農薬取締法に基づいて設けられ、農林水産省と環境省が共同で策定した「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」によって定められています。この基準は、農薬の適切な使用方法や残留農薬の管理、周辺環境への潜在的な影響の防止を促進するために制定されています。

農薬を使用する人は、以下の基準を守る必要があります。・農薬の容器や包装に掲載された情報を遵守する・該当しない作物や害虫、雑草には使用しない・指定の使用量や希釈倍数を超えて使用しない・指定の使用時期や収穫前の日数を守る

・指定の合計使用回数を守る

・農薬の使用詳細を記録する

・使用期限切れの農薬を使用しない

・航空散布や住宅地周辺での散布の際には、飛散を防ぐために必要な対策を講じる

・水田での使用時には、流出を防ぐために必要な措置を取り、止水期間などを遵守する

法律に抵触しないためのポイント3.農薬の保管や廃棄に注意する

農薬は、人体や環境に害を及ぼす可能性があるため、貯蔵と廃棄にはとくに慎重さが求められます。毒物や劇物として指定された農薬には、厳格な法的規制が適用されるのが特徴です。守らなくてはいけない法律は、主に3つあります。

1つ目には、毒物及び劇物取締法が挙げられます。毒物や劇物の製造、販売、貯蔵、廃棄に関する規制と責務を定めている法律です。毒物や劇物に指定された農薬は、耐久性のある専用の施錠可能な場所に保管し、「医薬用外毒物」や「医薬用外劇物」などと表示する必要があります。

また、農薬の名前や数量などを詳細に記録し、月に一度、保管状況を自己点検することが必要です。廃棄する場合は、化学的分解、焼却、中和などの適切な処理方法を用い、健康や環境に害を及ぼさないように配慮しなければなりません。

2つ目は、廃棄物処理法です。廃棄物の発生抑制や適正処理を促進するための法律となります。農薬の空容器や空袋などの廃棄物は、一般廃棄物として処理することができますが、容器や袋に残っている農薬をできるだけ除去し、容器や袋に穴を開けて再利用できないようにする必要があります。

また、廃棄物の処理には、廃棄物処理業者に処理を委託するなど、適正におこなわなければなりません。3つ目は、水質汚濁防止法です。この法律は、水質の保全と水質汚濁の防止を目的とする法律です。農薬を使用した後の洗浄水や、農薬の流出や漏洩による汚水は、河川や湖沼などの公共用水域に流入しないようにすることが必要です。

また、農薬の使用による残留農薬の問題を防ぐため、農薬使用履歴の記帳やポジティブリスト制度の遵守をする必要があります。

法律に抵触しないためのポイント4.農薬の使用には資格者の指導と監督が必要になる場合がある

農薬の適切な使用には、農薬安全コンサルタントや緑の安全管理士などの資格を持つ専門家の指導や監督が必要となることがあります。農薬の使用に精通した資格者は、農薬の安全かつ効果的な利用を指導し、監督する役割を果たすことがあります。

農薬安全コンサルタントは、農薬の安全性や有効性に関する専門的な知識を備え、農薬の適切な使用に関するアドバイスや指導を提供する資格です。農薬安全コンサルタントの認定を受けるには、農薬安全コンサルタント養成研修を受講し、成果確認試験に合格する必要があります。

緑の安全管理士とは、病害虫や雑草の防除に関する高度な知識とスキルを持ち、農薬の安全な利用を促進し、指導および監督をおこなう専門家のことです。この資格は、公益社団法人緑の安全推進協会によって認定されます。

資格を取得するには、緑の安全管理士養成研修を受講し、成果確認試験に合格することが必要です。また、この資格を持つ人は、緑の安全管理士更新研修会に参加することで、農薬に関する最新の法令や情報を継続的に学習できます。

薬事法と農薬についてまとめ

薬事法は医薬品や医療機器を対象にした法律であり、農薬はその範囲外ですが、農薬取締法によって規制されています。農薬の正しい使用と取り扱いは法的な規制があるため、十分に注意しなくてはいけません。違反してしまうと重い罪に問われる可能性があります。

安全に農業活動を続けるためにも、農薬取締法を遵守しましょう。